アメリカをロードトリップする際、限られた旅行期間内でときに効率よく速く移動し、またある時は味のあるカントリーロードをのんびり走ったりと、ハイウェイをうまく使い分けることでより充実したドライブ旅が可能になります。
そのためには旅に出る前にハイウェイについて知っておいたほうが断然有利。
知っておくと何かと便利なアメリカのハイウェイシステムについてご紹介します。
3種類のハイウェイシステム
全米を網羅するハイウェイシステムは大きく分けると3種類。
① インターステート・ハイウェイ
② USハイウェイ
③ ステートハイウェイ(州道)
これらのハイウェイをうまく使えば本土48州のだいたい何処へでも行くことができます。
ロードマップにはこれら3種類のハイウェイ網がそれぞれのシンボルマークとともに分かりやすく記されています。(下の写真:Rand McNally社のロードマップ)
①インターステート・ハイウェイ
まず上位にランクされるのが、インターステート・ハイウェイ Interstate Highway(州間高速道路)です。
インターステート・ハイウェイの表記はルートナンバーの前に、Interstateの頭文字「I」をつけて、「I-80」や「I-25」、「I-580」や「I-225」と表します。
またシンボルマークは全米共通なのでとても分かりやすい。
全米を網羅する基幹ハイウェイで、物流をはじめまさしく大動脈の役割を果たしています。
2019年3月現在のインターステート・ハイウェイ総延長は、46,876マイル(75,440km)。
日本の青森から鹿児島までおよそ2,000kmですから途方もない距離です。
ロードトリップでインターステート・ハイウェイを使うメリットとデメリット
✔ メリット:長距離を一気に移動できる
✔ デメリット:速く移動できる分、旅を楽しむにはちょっと味気無い
インターチェンジやランプなど、限られた出入口からしか乗り降りできない立体交差構造なので、一時停止や信号機は基本的にありません。いわゆるフリーウェイ Freeway ですね。
また対面通行ではなく双方向がセパレートで、たいてい中央分離帯 median によって仕切られています。
中央分離帯といっても郊外の荒野や山間部など場所によっては、反対方向の車線まで数百メートルも離れている所も珍しくありません。
日本の高速道路(自動車専用道路)に相当しますが、その多くが通行無料。
限られた旅行期間内で効率よく長距離を移動するにはインターステートの利用は欠かせません。
ルートナンバー偶数は東西方向, 奇数は南北方向、さらに便利な法則が
インターステート・ハイウェイのルートナンバーは偶数と奇数とで走っている方角が区別されており偶数ナンバーは東西、奇数ナンバーは南北に敷設されています。
インターステート40号線西行きなら「I-40 WEST」、東行きは「I-40 EAST」、25号線北行きなら「I-25 NORTH」、南行きは「I-25 SOUTH」のように表記されます。
インターチェンジや入口で、自分が行くべき方向は「右か左か?いや東か西か?えっ、どっちだよ~」なんてことがあるかもしれませんが、目的地の方角さえ頭に入れておけば迷うことはないでしょう。
このルートナンバーには覚えておくとさらに便利な一定の法則があります。
プライマリー・インターステート Primary Interstate Highway
1桁または2桁のルートナンバーで主要となる路線。
特に5の倍数のナンバー路線はインターステートの中でも基幹路線で、西海岸から東海岸までの大陸横断ルートや、メキシコ国境からカナダ国境までの縦断ルートがそれに当たります。
偶数ルート(東西方向)は南から北へ数字が大きくなり、I-10,I-20,I-30~I-90まで(I-50とI-60は無し)、
奇数ルート(南北方向)は西海岸から東へ数字が大きくなり、I-5,I-15,I-25~I-95まであります。
それ以外のルートは基幹路線の間を補完するように走っています。
●ちなみにインターステート・ハイウェイ最長ルートは、I-90号線で西海岸ワシントン州:シアトルから東部マサチューセッツ州:ボストンまで3,020マイル=4,860km。
3ディジット・インターステート Three-digit Interstate Highway
その名の通り3桁の番号が付くルートで、プライマリー・インターステートに接続する支線の役割を果たすフリーウェイ。
例えばサンフランシスコ・ベイエリアで I-80号線に接続する I-580 や I-680 のように、下2桁が接続するプライマリー・インターステートのルートナンバーになっています。
ビジネスルート Business Route(迂回ルート)
都市部の渋滞緩和目的の迂回路や本線から降りて市街地を通り抜けるルートとして設定されています。
例えば給油や食事休憩、宿泊などで市街地へ出入りする際に使うことが多いです。
ビジネス・ループ Business Loopとも呼ばれ、そのまま走ると再び本線に合流します。
制限速度は地域によってさまざま:州境を越えると制限速度が変わる所もある
気を付けたいのは州によってスピードリミットに違いがあること。
例えばユタ州を走る I-70号線東行きで(下の左写真)、80MPHだった制限速度が隣接するコロラド州に入ると、同じI-70でも75MPHに変わります(右写真)。
うっかり気付かず飛ばしていると・・・スピード違反でハイウェイ・パトロールのお世話に、なんてことになりかねません。
インターステート・ハイウェイの制限速度は州や地域による違いはありますが概して速めです。
西部の平原や砂漠地帯では75~80MPH(121~128km/h)、カリフォルニア州や東部では65~70MPH(105~113km/h)が一般的。
都市部など人口密集地域では交通量が多いため、50~55MPH(80~88km/h)の区間も。
なにかと便利なマイルポスト、緊急時には重要な目印になる
マイルポスト Mileposts、またはマイルマーカー Mile Markers とは基点からの距離を示す標識のことで、1マイル毎にインターステート・ハイウェイの路肩に設置されています。
州ごとに基点が変わり南北ルート(奇数ナンバー)なら、その州の南端から(まで)の距離、東西ルート(偶数ナンバー)なら州の西端から(まで)のマイル数を表します。
州の途中からはじまるインターステートの場合は、そのスタート地点が基点。
また出入口の番号も、マイルポストの数字と同じで基点からの距離に連動しています。
例えば、アリゾナ州内の I-10 EAST 出口382番(下の右写真)は西隣のカリフォルニア州との州境から382マイル地点の出口ということ。
出口手前に設置された実際の距離を示すマイルポストも382マイル(下の左写真)
特に長距離を移動する時には「~まであと何マイル」というように、目的地までの距離を把握するうえでとても便利。
遭遇したくありませんが、万一事故や車の故障などトラブルが生じた場合には、このマイルポストを目印に自分のいる場所を知らせます。
見渡す限りの大平原など、周囲になんの目印も無いような所では重要な役割を果たします。
大都市圏では5~6車線は当たり前、渋滞低減目的の信号機もある
郊外ではたいてい片側2車線ですが、大都市圏に近付くと次第に車線数が5~6車線に増え、合分流ゾーンでは8車線なんてところも。
また外側2車線が出口車線だったり、3車線まとめて合分流するインターチェンジがあったり。
時間帯によっては走っている車の数も半端ではないので車線変更が大変なことも。
大都市圏のフリーウェイを走行する際には、
✔ 自分の行き先をあらかじめよく把握しておく
✔ 標識をよく確認する(同乗者がいれば一緒に)
✔ 早めの車線変更
✔ 突然の渋滞に注意(通勤時間帯は要注意)
下の写真はカリフォルニア州・サンフランシスコ湾にかかるベイブリッジ San Francisco – Oakland Bay Bridge:インターステート80号線西行き料金所過ぎの各レーンに設置された信号機。
例外的に一部の合流ゾーンなどでラッシュアワーの渋滞を低減させるため信号機が設置されている場合があります。
②USハイウェイ
インターステート・ハイウェイの次にランクされるハイウェイシステムが USハイウェイ US Highway です。
ルートナンバーの前に US を冠して「US50」や「US212」のように表記、呼び方は『US Highway 50』とか『US Route 191』など。
シンボルマークは特徴的な形で全米共通です。
インターステート・ハイウェイと同様に全米を網羅する基幹ハイウェイシステムですが、インターステートは州をまたぐ長距離移動ルートの主流なのに対して、USハイウェイは限られたエリア内の比較的短距離(あくまでアメリカの尺度での短距離)の移動手段として利用されるケースが多いハイウェイです。
ロードトリップでUSハイウェイを使うメリットとデメリット
✔ メリット:大都市の市街地からローカルな小さな町中や大自然の真っ只中も走れる
✔ メリット:好きなところで自由に停まれる(インターステートはそうはいかない)
✔ デメリット:インターステートに比べると移動時間がかかる
USハイウェイの多くは片側1車線の対面通行で、市街地や町の中心部を通り抜けたりするため、信号機があったり一時停止の交差点も存在します。
いっぽうで一見インターステート・ハイウェイのような、片側2車線以上の双方向セパレート構造のゾーンも多数あります。
対面通行区間で巨大なトラックとお互い時速65マイル(100km/h以上)ですれ違うと、慣れないうちは結構ビビります。
USハイウェイは日本で置き換えると一般国道に相当。
インターステートと同様に知っておくとロードトリップするうえで断然便利な一定の法則があります。
偶数ナンバーは東西ルート、奇数ナンバーは南北ルート(インターステートと同じ)
インターステート・ハイウェイと同様に東西路線は偶数ルートナンバー、南北路線は奇数ルートナンバーが付けられており、「US50 EAST、US50 WEST」や「US89 NORTH、US89 SOUTH」のように表記されます。
また下の写真のようにインターステートとの重複区間も所々に存在します。
夕陽に向かって走っていても「US●● EAST」なら東行き!
インターステート・ハイウェイは高速走行を可能にするため、できるだけカーブを少なくした設計になっているのに対して、USハイウェイは山岳地帯ではヘアピンカーブがあったり谷を大きく迂回したりと、地形によって進む方角が大きく変わる場所があります。
ルートナンバーの配置はインターステートとは逆で、偶数ルート(東西ルート)は北のUS2号線から南へ向かって大きい数字に、奇数ルート(南北ルート)は東海岸のUS1号線から西海岸に向かって路線数字が大きくなるしくみです。
インターステートと同様に3桁ナンバーの路線は、主要路線である2桁ナンバールート(1桁を含む)の支線のような役割を果たしています。
●ちなみにUSハイウェイの最長は US20 で、西海岸のオレゴン州・ニューポート Newport から東部マサチューセッツ州・ボストン Boston まで12州をまたいで3,365マイル=5,415km。
制限速度は場所によって細かく変動:注意したいのは町に接近したとき
町へ近づくと “SPEED REDUCED AHEAD”(この先減速)の注意標識が現れて、それまで65MPHだった制限速度が50MPH→35MPH→25MPHのようにスピードダウンします。
町中ではたいてい25MPH(40km/h)制限。(下の写真はネバダ州のUS95号線 Hawthorneの町)
地方の小さな町など、ついつい十分スピードダウンせずに走ってしまいがちですが、思いがけず人が横断したり脇から農作業の車両が出てきたりして、万一事故を起こしてしまったら取り返しのつかない事態に。
アメリカ人ドライバーの運転マナーは概して良く、いなかの町中では制限速度をぴったり守って運転しています。
ポリスや保安官 Sheriff がスピードレーダーを持って取り締まっていることも珍しくありません。
USハイウェイのスピードリミットは、民家などが無い平原や砂漠地帯では、60~70MPH(96~113km/h)、起伏やカーブのある山間部などでは、50~60MPH(80~96km/h)、また市街地や人口は少なくても地方部の町中では、25~40MPH(40~64km/h)が一般的。
もちろん峠道などでは相応の安全速度が設定されています。
広大なアメリカロードトリップにせかせか運転はマッチしません。
スピードリミットは守りましょう。
マイルマーカーは目的地までの距離を把握するには便利
インターステート・ハイウェイと同じく南北路線=奇数ルートナンバーならその州の南端基点のマイル数、東西路線=偶数ルートナンバーならその州の西端基点のマイルを表すのが基本。
なのでもしマイルマーカーの数値が増えていけば北または東へ進んでいることになります。
一部例外として、郡 County 単位の距離を示す場合があります。(カリフォルニア州)
遭遇したくはありませんが万一事故など緊急時には、ルートナンバーとともに最寄りのマイルマーカーを確認し救援を求めることになります。
緊急時は「911」(警察・消防・救急とも全米共通)の緊急通報へ。
③ステート・ハイウェイ(州道)
各州が維持・管理するハイウェイがステート・ハイウェイ State Highway(州道)です。
State Route や State Road と呼ばれることもあり、日本でいうと都道府県道のような道路ですね。
地図やガイドブックなどの多くは、州の略号をルートナンバーの頭に付けるのが一般的で、例えばカリフォルニア州の州道1号線なら California の略号 CA を冠して「CA1」、ユタ州のステート・ハイウェイ95号線は「UT95」のように表記されます。
あるいは「SR1」や「SR95」のように “State Route” の頭文字を冠する場合もあります。
ルートナンバーとシンボルマークは州によって異なり、州境 State Line を越えると基本的にルートナンバーが変わります。
州道を使うメリットとデメリット
✔ メリット:好きな場所で停まって景色(山,海,草原,砂漠や町など)だけでなく地域の文化, 歴史, 人にじかに触れながらのんびりとドライブできる
✔ デメリット:移動時間がかかる(途中で所々停まりながらだとなおさら)
✔ 山岳地帯では冬シーズンのあいだ閉鎖になる路線や区間が結構ある
最大のメリットは気に入った所に自由に停まりながらマイペースな旅ができること。
その反面、例えば険しい峠道で想定した以上に時間がかかり予定が狂ってしまうことも。
道幅が狭いルートも多く制限速度は比較的遅め。
気を付けたいのは速度
特に注意したい場所は
✔ 町や集落:たとえ人口の少ない小さないなか町でも通りかかる際の速度には注意
✔ 山間部:日本と違い、片側が断崖の山道でもガードレールが無いのが当たり前
安全のためには、町や集落の手前にある “SPEED REDUCED AHEAD”(この先減速)の注意標識から始まる減速制限速度を守ることと、学校が開いている時間帯のスクールゾーンと日没後は一層の注意を払うことです。
ステート・ハイウェイで出くわすことが多いのは
●放牧されている牛や羊などの家畜
下の写真のように昼間なら見通しもきくので危険度も低いですが、夜間は注意が必要です。
●野生動物
特に夜行性の野生動物によっては車のヘッドライトに誘われて接近し、目の前に飛び出して急ブレーキ!といったことが比較的起こりやすいのがステート・ハイウェイ。
真っ暗闇を照らすヘッドライトに突然浮かび上がるシカやウサギにはヒヤッとします。
もちろん大きな野生動物に出くわすことが多いのはステート・ハイウェイドライブの魅力でもあります。
(下の写真はアリゾナ州で出会ったプロングホーン)
●自転車の旅人
写真のようなサイクリストに出会う頻度が高いのは、特に夏シーズンの国立公園や州立公園など自然公園の近辺。
ステート・ハイウェイにはシーニック・バイウェイ(景勝道路)に指定されているルートが多く美しい景観を楽しむドライブにはピッタリですが、景色に見とれて前方不注意にならないようにしましょう。
時間が許せば走りたいハイウェイは
限られた旅行期間でも断然おすすめのドライブルートはステート・ハイウェイ(州道)、次いでUSハイウェイ。
アメリカ在住者ならともかく日本から出かける場合は、どうしても時間的制約がついてまわりがち。
それでも行程にできるかぎり組み入れたいのが味のあるステート・ハイウェイのドライブです。
時間はかかるけれど、ステート・ハイウェイにはそれを補う魅力があります。
もちろん移動効率を考慮したら、高速走行できるインターステート・ハイウェイの利用は欠かせません。
長距離でも移動時間が読めることがインターステートの大きなメリット。
利用するハイウェイは目的地や期間など、旅のスケジュールにあわせて選択するとよいでしょう。
コメント